2024年1月15日月曜日

中村聡さんトークショーの内容メモ

 TCGフリマ(2024/01/07) D-0特集スペシャル企画 中村聡さんトークショー


【注意事項】

・後から聞いた内容を記憶だよりで文字起こしした内容になります

・聞き間違いや、ニュアンス違い等々、正確性は保証しかねます

・とはいえ1人のディメンションゼロやっている人間として超貴重な機会でしたので、記録に残したく思った次第ですので、その辺りをご理解の上でお読み頂ければ幸いです



まずは中村聡さんの紹介から


↓ここからプレゼン資料

○中村聡さんの紹介

・有限会社 遊宝堂代表

・D-0のデザインをした方

・マジックでは黎明期から活躍し愛称はNAC

・変わった帽子を好み海外勢からは「Hatman」と呼ばれる。

・緑が好き!

↑ここまでプレゼン資料


主催のはまさん「僕ら(MTGプレイヤー)にとってはマジックの人という認識ですが、皆さんにとってはディメンションゼロを作った人という認識ですね」

緑が好きということで贔屓して強くしたのでは?とwikiにも書いてありますが(笑)、別にそんなことは無いです。



○開発の経緯について

ブロッコリーさんからの最初のオーダーは、「賞金制カードゲームを始めるので強い人が勝つゲームを」とのこと。

この時点では所謂ディメンションゼロらしさ(プラン、3×3、全てインスタントのカード)等は何も固まっておらず、ただ当時の自分が面白いと思ったものを落とし込んでシステムを構築していった。

結果プランのシステム等ができてきて

出来る選択肢が多くなり、当初の要求を満たす物が出来上がった。


移動のシステムにより、殴りきれずに息切れ・失速してしまう。そこを見極められるかというゲーム性と上手いプレイヤー勝つという要求に合致できた。

中央投下が実装されてシステムが出来上がった時に、一気にゲームになれた。


(質問【D0の特徴的な部分(マス目、プラン、ほとんどのカードがクイックタイミングなど)が、開発中にどのような順番や経緯で検討・採用されていったのかを知りたいです】も合わせて回答)


強い人が勝てるゲームができた一方で、考えることが非常に多いので、マジックとの両立は無理という理由で離れていったプレイヤーもいました。


ディメンションゼロで関わっていて一番嬉しかったのはビフォアが発表された時に「これ面白いんじゃないか」的な反応をもらえた時。

発表が終わった後に延々とカードを触っているユーザーが居て、それを見た時に手応えを感じた。


○想定外のデッキはありましたか?

想定外のカードという意味では禁止・制限リストのカード全てです。

シーズン制限などを設けて必ず帰ってくることを約束しながら大会環境が健全になるように調整した


強い/弱いカードについて、デバッグで見つけられないわけでは無いが、開発に締め切りがある都合上、緒直前の調整の結果かもしれない。

デバッグチームもプロなので突出したカードは凡そ発見し、尖った部分を上からハンマーで叩くように弱く調整していった。

加速などはその代表格で、どんなに強いカードも複数枚で対処出来るというゲームの根本を変えてしまう可能性を秘めていた為、何度もパワーを下げる調整をした結果が現在の状態。


○開発で苦労した点は?

デバッグで強弱を調整した時に苦労したのが以下の二つ。

・意図的に弱くした団結と加速

・6コストバニラユニットの調整の難しさ

前者は調整の匙加減で一気にディメンションゼロというゲームを壊してしまう可能性を含むため何度も弱くした。

後者のコスト帯のカードはスマッシュ値が1→2に変わる境目のため、スマッシュ値/移動コストの兼ね合いでどうするのが最適であるのかを探すのが苦労した。


アイデアは5秒で出来る時もあれば、2ヶ月経っても出来ないことも

単発で終わってしまった能力(リンク・ストラテジーなど)もあり、そこは僕ら開発チームの力不足といった具合


○開発の流れ

Ⅰ-1のみ特殊でシステム・カード・イラストが全て揃ってから、カード毎の関連を考えてストーリーを後付けした。(RonRon-kokoの感想「だからピースキーパー・エンジェルがヒロインカードなのにあんなメカメカしい見た目なんだ…」)

Ⅰ-2の段以降は設計→調整→イラスト発注→印刷所→発売を並行して動かしたので、設計チームは一つの仕事が終わると次の段の設計を始める。

ただスケジュールが遅れたり・巻いたりするは常なので、その時々で臨機応変に。


○リブートの可能性について

僕たちはあくまでシステムを作成してブロッコリーさんに納品した立場であり、権利はブロッコリーさんがまだ持っている状態なので、僕の一存ではなんともし難いですね(笑)


○「大巨人クレーター・メーカー」について

Ⅰ-1環境で暴れたため禁止指定となったカードだが、僕自身そこまで危険なカードという認識はなかった。

そんな中あるイベントでプレイヤーの1人であるターパンさんからこのカードが如何にダメかと力説されたが、それもあまり響かず。それなら対戦でやって見せましょうとなったのですが、僕が勝っちゃったんですよね・・・(笑)

確か当時プライベートか試作だかのデッキで「バルーン・バタフライ(4コスト、パワー5000、フリーズでスクエア移動)」が入っていて、パワーでは負けない・エネルギー破壊されても移動が誤魔化せる、でなんとかなっちゃったんですよね(当時他に誰も「バルーン・バタフライ」使ってなかったけど)。


ただ今から思うとⅠ-1の中では「大巨人クレーター・メーカー」と「象砲手バルカン」は突出して強かった。


○中村さんがディメンションゼロに関わっていたのはいつまでですか?また後期のディメンションゼロでは共鳴・補給・覚醒とコスト軽減ばかり出会ったのはどういった意図だったのでしょうか?

明確にディメンションゼロが変わったなーと感じたのはプロデューサーが変わって、多色カードやコスト軽減が導入された時


その頃は既に担当を離れておりノータッチだった。

セカンドセンチュリー後半頃には引き継ぎをしていた。


コスト軽減系のカードがフューチャーされたのは商業的に「前段よりも強化されたこと」が解りやすいアイコンであったと想像します


○デザインしたカードの中で特に好きだったカードはなんですか?

昔にデザインしたゲームなのでほぼ覚えてないです・・・

「バードマン・ソウル」は覚えている。あと「失恋の痛み」。

ディメンションゼロの漫画を書いてる先生が小学生に言われた「失恋の痛みも知らないクセに」のエピソードで凄く記憶に残っている。


—以下、質問回答のコーナー—


○質問【Ⅰ-1環境でどこまでメタが回ることを想定していたのか、とか聞いてみたいです。メタ上位の歌劇場やクレーターミュラーをウィニーで一蹴した、みたいな話しをどこかで聞いたような聞かなかったような。】

○回答

正直プレイングでなんとでもなると思っていた。

プレイヤーの腕や門でいくらでも誤魔化せると考えていた。

(クレーターメーカーについては上述のため省略)


○質問【ご記憶のある範囲で大丈夫ですが、制作サイドから見て、このカードはもっと使われるだろうと思っていたが使われなかったカードや、活躍していて驚いたカード等はありますか?】

○回答

ある意味活躍しすぎて驚いたカードは禁止・制限カードに指定した物です(笑)

使われるだろうと思ってたカードはゴッドファーザーやルドルフで、発売直後から物凄く使われると思っていたが、初動の反応はイマイチだった。

じわじわと使われ出して結果想定通りとなった


○質問【今D0を作るとしたら、時代背景やノウハウを前提として過去のD0と何を変えるか、あるいは変えないかとその理由が聞きたいです】

○回答

偶然にも配信映えする、が、ひと試合が長いので、

初めから2〜3エネルギーある状態でゲームを開始できるようなルールにします


これだけ皆さんに遊んで頂けているということはシステムを楽しんでもらえているとのことなので、システムは変えずにルールやカードを見直すようにすると思います(システム変えると全カード作り直しになり別ゲームになるので)


○質問【終了が決まった時期について】

○回答

答え辛いですね・・・

先ほど話した開発の流れの中で一番お金がかかる(動く)のがイラスト発注なので、それくらいの時期にはまぁ、といった感じです。

ただデザインしたけど発売されなかった物はないです(幻のⅤ-3とかも特にないです)


○質問【非常にネガティブな内容になるかもしれないのですが、5-1,2が別名再録やバニラ収録など他のパックに比べて環境に触れる可能性のあるカードが少なかった理由や意図がもし聞けるなら聞いてみたいですね。】

○回答

前述の質問の回答と重なる部分もありますが、終了の時期と連動しますね・・・

ただブロッコリーさんは本当にディメンションゼロを大事にしていていました。

主催のはまさん「思い出しましたが、当時自分ブロッコリーの株持ってて決算報告書見たことあります。それは、まあ、凄かったですね・・・」


○質問【幽霊屋敷サイクルは本来もっと強くなるはずだった(のが調整された)と噂で聞いたことがあるのですが、その調整前がどんなだったのかお聞きしたいです。】

○回答

すみません。いかんせん19年くらい前なので覚えてないです・・・

どんなカードでしたっけ?

(丁度裏で対戦してたデッキに幽霊屋敷があったので実カード確認後)あったかも・・・、ごめんなさい覚えてないです。


○質問【真相の慰安室はどのような調整であの内容、コストになったのかを言える範囲でお願いします。その他開発で思い出深いエピソードがあればお願いします。】

○回答

カード自体覚えてないですが、非常にコスト効率の悪いカードということで、想像するに設計の最終段階で締め切りに追われて弱く調整したのだと思います。


○質問【ファーストからセカンドセンチュリーまでは、白のカードが比較的結果を残し辛い印象がありましたが、プレイヤーが強い使い方を見つけられなかっただけなのか、開発側の想定していた強みがあれば聞きたいです。】

○回答

白のデザインとしてノーマルタイミグだけれどもパワーの高い堅牢なイメージで作ったが、グレン・リベットやロマネ・コンティぐらいしか使われなかったのは残念だったが、緑はエネブできて同サイズでクイックで動けるならそりゃそっち使われる(笑)


また、使用率が飛び抜けて低かった赤のカードについては、後に公式から赤王決定戦が開かれるなどネタにされました(笑)

後のカードは強い目に調整



以下、自由質問のコーナー(時間巻いてるので少なめでお願いします、とのこと)


○質問【ビフォアーセンチュリーで黒が無い理由】

○回答

初めて遊んでもらう人に対して、黒という色が除去や手札破壊など便利すぎる色のため避けたのだと思います。

またディメンションゼロのシステムを理解してもらう為に、スクエアで闘って欲しかったと思います。


○質問【失恋がクイックで使える理由は?(他のカードゲームでは類を見ない強さのため)】

○回答

全てのカードがクイックであることという考えが先にあり、そこに手札破壊を落とし込んだ結果


○質問【挟撃などの能力について何かあれば】

○回答

セカンドセンチュリーまでが僕が入っている中で、ついでに何か出来る能力というのもあり、ある種のコスト軽減カードと認識して意図的に弱く調整した


○質問【当時は他にやっていなかった本当に世界に10枚しかないカードをパックに封入すると言うことについて、なぜをこれを実施しようとしたのか?またなぜⅠ-1やⅡ-1等のでベーシックパック限定なのか?】

○回答

確かアイデアソースは池っち店長だったような・・・

遊○王のブルーア○ズみたいに世界に何枚しかないカードってカッコよくない?的な話から膨らましたアイデア

パックに特別感を持たせたかった

ベーシックパック収録なのは再録などを含むこれからディメンションゼロを始める人向けのパックを常にお店に置いといてもらいたいという意図のため